「ごはんは平たい皿に盛ったときと茶碗に盛ったときとでは、味がちがうんです」
西麻布の老舗フランス料理店「龍土軒」の四代目シェフ・岡野利男氏が教えてくれた。
なぜかというと、皿からフォークで口に運ぶのと、茶碗から箸で口に運ぶのとでは、ごはんが口に入る場所がちがうから、咀嚼の仕方もちがうし味を感じる味蕾の場所がちがう。
さっそく家で実験をした結果、たしかに!
こちらに初めて連れて行ってくれたのは、昨日のチーズの記事でも書いた元ボスで元駐フランス大使の北原氏。
「ここはね、昔から外務省がよく使っていた店でね、○△事件(いろいろ言われてましたが忘れました)の時なんかはここで密談したんだよ」
なんせ大正生まれの方だったので、歴史の教科書に載っているような戦前、戦中の昭和史エピソードが話によく出てきた。
あるとき四代目を継いで間もなかった岡野シェフが話していた言葉がとても印象に残っている。
「和食ってくどいでしょ」
実家のフランス料理店を継ぐべく、中学3年生から東京のリセに通い、18才で渡仏。28才まで10年間、「ホテル・リッツ」などフランスで修行した岡野シェフ。
味覚が完全にフランス人なのである。
そんな岡野シェフのつくる料理は、昔ながらのフランス料理。
料理の世界は奥が深い。