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ノーマン・フォスターといえば、イギリスのみならず世界を代表する建築家のひとり。代表作は香港の香港上海銀行本店ビルで、
建築家のノーベル賞といわれるプリツカー賞も受賞、母国のイギリスではナイトの叙勲も受け、一代貴族の男爵でもある。
そんな有名建築家のフォスター卿がある建築物について語る映像がある。
フォスター卿はかく語りき、
《彼女はとても特別なクライアントを持っていてね、彼女は彼のために邸宅を設計したんだ。彼女が手がけた唯一の邸宅だった。それは、ファーイースト(極東)、ロシアの地にある》
《あるとき偶然にその彼にパーティーで会ったら、彼が「見て見て!これが彼女が僕のために約束したものなんだ! これが彼女の作品なんだ!」》
彼女とは、先日、亡くなった建築家のザッハ・ハディド。
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そして、【彼】とは、本ブログの読者の皆さんにはおなじみのアマンのオーナー、ドローニン氏のこと。
”ファーイースト”とは、いかにもかつて七つの海を支配した大英帝国の末裔的な表現ですが、ロシアのことで、邸宅とはキャピタル・ヒルにあるドローニン氏の自宅。
↓ コレです。
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フォスター卿は【特別なクライアント】【彼】と言うだけで、ドローニン氏の名前は口にしていないが、こうして、ドローニン氏は、着々と建築家界にもその名を刻んでいる。
かつて、テムズ川沿いにあるフォスター卿のオフィスに彼が手がけたスタンステッド空港の取材のため訪ねたことがある。
早朝のアポイントメントで、朝陽にキラキラ輝くテムズ川を見ながらオフィスに着き、玄関から上にあがる階段(これが長いのなんのって)をのぼっていると、頭上から「グッドモーニング!」と次々と明るい声がかかる。
あれっと見上げると、階段をみおろすところが長いカウンターになっていて、スタッフの皆さん、そこでクロワッサン食べながらニコニコして手を振っている。
「アイム・ハングリー・トゥー!」と返すと、クロワッサンを投げる真似する人も。
白のワイシャツの腕をまくってすでにお仕事中のフォスター卿も笑って振り返り、「グッドモーニング!」。
テムズ川に面した一面ガラス張りで、天井は高く、開放感あふれるオフィスで、明るく和気藹々とした雰囲気が漂っていた。ああ、こんなところからフォスター卿の作品は産みだされているのかと思ったものだった。
それにしても、フォスター卿のオフィス、あれがホテルだったらよかったのに…。
*(A)(B)(C)の画像はDezeen Magazineのサイトよりお借りしました。