人目につかずにホテルで密会をしたい政治家、
あるいは
待ち受ける多くのファンの目を逃れて出入りしたい
人気スターなどがよく使う手が
厨房などバックヤードを経由して
従業員玄関や搬入口から出入りするルート。
今から半世紀前、1968年6月5日
ロサンジェルスの老舗ホテル「アンバサダー・ホテル」にも
そんな超人気スターが訪れていた。
その日の夜、
アメリカ大統領予備選を地元カリフォルニアで勝ちぬいた
ボビー、ことロバート・ケネディ大統領候補が
支持者たちに向けて勝利演説を行い
会場のエンバシー・ルームは湧きに沸いていた。
その後、会場の裏から厨房を抜けて記者会見場に向かう途中、
ボビーは
厨房にスタッフを装って潜んでいた犯人の凶弾に撃たれた。
兄のジョン・F・ケネディ大統領の暗殺事件から
まだ5年も経っていなかった。
ちょうど今は6月25日発行の小誌「ホテルジャンキーズ」の
編集作業の最中なのだが、
ホテリエのしゅういち氏に元編集者のバアサンさんが
歯に衣着せぬ本音でズンズン迫る誌上バトルロイヤルが人気のシリーズ
「しゅういち VS バアサン」で次号取り上げるテーマが
サミットの際の担当ホテルの決まり方とホテルの警備について。
しゅういちさんから、ご自身が実際に経験されたこととして
アメリカ大統領が来訪の際には、
3ヶ月前からホワイトハウスから派遣されたスタッフが
館内を厳重で徹底的なチェックを行い、
さらには、ホテルのスタッフ全員の身元証明を提出させられるなど
アメリカのセキュリティチェックの厳重さが語られているが、
アメリカには大統領などVIP中のVIPたちが
公衆の面前で
やすやすと暗殺されてきたという
忌まわしい歴史がある。
仕事柄、ホテルのバックヤードの厨房を見る機会も多いが
ロバート・ケネディが暗殺されたあの夜、
「アンバサダー・ホテル」に居合わせた人々を描いた
映画「ボビー」のあのシーンをつい思い出してしまう。
邪魔者は消せ、と存在は消せても
人の記憶は消せない。