古風な装いだけれど、心はラディカル・シックな女、というのが、
ミス・ニューヨーカーである。
こう書かれているのは、常盤新平さん。
直木賞作家で、マフィアものやアーウィン・ショーの翻訳でも知られ、なかでもショーの「夏服を着た女たち」は、翻訳における名作中の名作だと、わたしは思う。
15年ほど前に山の上ホテルで対談させていただいたが、とてもシャイな方だった。
うんと照れくさいと、テーブルに頭がつくほどうつむき、しばし黙ったまま頭をゴリゴリやり、かなり長い沈黙のあとで突然、がばっと顔をあげたかと思うと、わたしに向かってぜんぜん脈絡なく関係ない質問をされるのがおかしかった。
冒頭の文は「ニューヨークの女たち」というエッセイ集の一文だが、アーウィン・ショーの短編に登場するような「知的で都会的な美女たち」を常盤さんは"ミス・ニューヨーカー"と名づけた。
これを読んで以来、わたしの心のなかのかけ声は、
めざせ、ミス・ニューヨーカー!
「外は寒い朝」、ホテルの朝食のオーダーも決まっている。
「トマト・ジュースにパセリ入りのオムレツ、シナモントーストにコーヒー」
…と、ここまでは真似できるが、細いハイヒールでニューヨークの五番街をソフィスティケーテッドな雰囲気でシックに軽やかに歩くのは…むずかしい。
今年こそ、なってみたい、ミス・ニューヨーカー、
心はラディカル・シックな女。