別にどうってことないのだけれど、気がついたらそこに座っている。
そんな窓辺のシーンがいいホテルが好きだ。
とりたてて美人でもとびきりスタイルが抜群でもないけれど、ふっと心をつかまれてしまう自分のタイプというのがあるが、ホテルの窓辺のシーンはわたしにとってそんな感じのものだ。
先日、パリで泊まったサンジェルマンデプレのホテル「ヴィラ・マダム」はそんなホテルだった。
このホテルについては、2/25発売の小誌「ホテルジャンキーズ」120号 ↓
の拙稿「思い出のホテルに『再会』するために、パリへ」でも書いたので小誌読者のみなさんはご存知かと思うが、ブログの読者のみなさんにも、その顛末を簡単に書いておきたい。
わたしのパリにとって大切な思い出のホテルが「ヴィラ・マダム」にリニューアルされたと思い、パリ行きを急きょ決めたわたし。その再会への思いをできるだけ長く味わうため、わざわざドーハを経由し、パリまですっ飛んで行ったわたしだったが、それは大きな勘違いでした…思い出のホテルは通りのちょっと先に、そのままの姿でありましたとさ。というお話でした。ああ、書いているだけでも恥ずかしい。
ともかく、
勘違いした先のホテル「ヴィラ・マダム」が、窓辺のシーンがいいホテルだったのだ。
別に何か特別なものがあるわけでもなく、通りをちょうどいい高さで見下ろすことができ、向かいに目をやると、アパルトマンの窓の向こうに普通に暮らすパリジャンの生活がある。実にさりげないパリのシーンがそこにある。
パリのプチホテルとしてはかなり広い部屋で、デスク周りにはPCを使って仕事をするには十分な数のコンセントがあり、快適に仕事ができた。
反対側には、ちょっと疲れたらごろんと寝転がれるデイベッドもある。
昼下がり、ここで昼寝していると、隣の女子校から下校する少女たちの声が聞こえてくる。迎えの母親にブーランジェリー(パン屋さん)でパンを買ってくれとねだっている女の子の必死の説得の口上を聞くのも楽しい。
このブーランジェリ、何を食べてもおいしかったが、いつも人がたくさん並んでいて、人気の店のようだった。
いま、書いていて、ふと気づいたのだが、
窓辺のシーンがいいホテルというのは、ひとり泊まりにいいホテルでもある。