週末、「マリーゴールド・ホテル 幸せへの第二章」を観てきた。
「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」の続編だが、第一作目は、物価が安い国の豪華リゾートホテルで優雅な余生を送ろうとイギリスからジャイプールにやってきたロングステイのシニアたちが、話に聞いていたのとはまったく違うぼろホテルで新しい生き方に出会う…というお話。
第一作目は、インドの大地から湧き上がるような(埃と)エネルギー、はちゃめちゃさ、ノリの良さがぐんぐん引っ張り、最後に席を立つときに、ああ、おもしろかった、と気分のいい伸びを出来た。
が、今度の第二作目は、頭で作った感じで妙に理窟をつけすぎと言おうか、ちゃんと説明的すぎで、エンドロールを見ながら、なんだか、ああ、疲れた…というのが私の正直な感想。
頭で理窟でつくったものは、どうもしっくりこないのは、ホテルも同じかも。
そういえば、「雑踏が大好き」という母がこんなことを言っていた。
「良い雑踏は入っていけるけれど、悪い雑踏は、はじかれる」。
年寄りの動物的感覚、あなどれず。
映画のなかで、ひとつだけ印象に残ったシーンがある。
冒頭のシーンで、ホテルのオーナー一族のインド人青年と共同マネージャーのイギリス人老婦人のマギー(本国ではお屋敷の家政婦として「40年間、床磨きをしていた」)が、ホテルの新館をオープンするための資金調達のため、アメリカで投資家に会うシーン。
その席上、ティーバッグとポットに入ったお湯を運んできたウェイターに向かって、マギーが頭から湯気が出んばかりに怒って言う。
「そんなものは紅茶ではない! 紅茶とは、ちゃんとした茶葉と沸とうしたお湯でいれるものである! ぬるいお湯に長時間ティーバッグを入れたものを紅茶だなんて、言語道断!」
まったく同感である。
このことを私もことあるごとにずっと言い続けてきているのだが、高級ホテルと自称しているホテルでも多くのホテルがティーバッグを使用しているのは残念な限り、というか正直許せない。紅茶を淹れるお湯の温度については、沸とうしたお湯ではなく少し冷ましたお湯で淹れた方がおいしいなど、それぞれ好みのやり方はあれど、少なくとも、ティーバッグではなく茶葉を使ってもらいたい。それが高級ホテルと自称するうえでのホテルの良心だと思う。
下の写真は、アムステルダムの名門ホテル「アムステル・インターコンチネンタル・アムステルダム」のティーラウンジ。「どの茶葉になさいますか?」とサンプルの木箱を持ってくる(今もやっているのかどうかはわかりません)。
(写真は共に日経BP社刊の「Smica 」に掲載した拙稿の記事より。(C)Hiroshi Mori Corporation)
ちなみに、マリーゴールド・ホテルのロケ舞台となったホテルは、ウダイプールのケンプール村にある王宮をホテルにリモデリングしたホテル「ラウラ・ケンプール」。